避難所へのペットの同行避難は、課題山積で、国の方針は現場を無視した理想論でしかありません。避難所へは、ペットを連れて行くべきではない??防災士が解説します

inu

ペットの同行避難は、避難所運営にあたって大きな課題となっています。飼い主とその他避難者の間で必ず意見の対立が発生します。

 

東京23区では、同行避難可を事前に打ち出すなど、先進的な取り組みをしていますが、行政が方針を打ち出せば、それが確定事項として、避難者まで徹底されるかというと、そうではありません。災害時に不平不満が噴出する事が目に見えています。

唯一の解決方法は、事前にルールを決めて、関係者で合意形成をしておくことが不可欠ですが、実際には、どこの自治体も、本質的な部分の決定には至っていません。(マニュアルはあるけど、避難するスペースが決まっていない等)

 

今回は、このペット同行避難をテーマに、情報を発信したいと思います。ちなみに「しば」は、今のこの状況下であれば、ペットとの同行避難は、困難であると感じています。

 

ペットの同行避難とは? 環境省のガイドラインより

同行避難とは、災害発生時に飼い主が飼育しているペットを同行し、避難場所まで安全に避難することをいいます。同行避難は、避難所での人とペットの同居を意味するものではありません。

ペットと飼い主が同行避難することは、動物愛護の観点だけではなく、被災者である飼い主の避難支援という観点からも重要です。

また、被災動物を放浪状態のまま放置すると、放浪動物が人への危害を及ぼしたり、生活環境に悪影響を及ぼしたりするおそれがあります。

飼い主の自己責任(自助)によるペット用品の備蓄と同行避難を原則とし、避難所においてペットの受入体制を整備しておくことが、被災者が安心・安全に避難するためにも重要です。

引用元:(環境省) 災害時におけるペットの救護対策ガイドライン

しば

ペットの避難には同伴避難(避難スペースでペットと一緒に生活する)という概念と同行避難がごっちゃになっているケースが多いのも問題の一つです。

 

同伴避難については、環境省も推奨していません。

 

避難所内でのトラブルについて(事例紹介)

過去にどのようなトラブルが避難所で発生したかをご紹介します。

西日本新聞 2020年7月29日 災害時、ペットは…飼い主を困惑させる「同行避難」と「同伴避難」

毎日新聞 2019年11月16日 避難所にペット 千葉県内、対応に差 千葉市「ケージやリードを」市原市「場所ない、屋外で」

しば

コロナ禍で、これまでと比較して、1人当たりに必要とされる面積が2倍近くになりました。その結果、十分な避難スペースを確保できない自治体が続出しています。

大規模地震に比べて避難者が少ない風水害の事前避難でさえ、避難スペースが確保できていない自治体が多いです。実際に、台風10号時に定員超過による避難者受け入れ拒否が発生した自治体は約3割(236自治体の内79自治体)。

 

人間の避難スペースされままならないのに、ペットに室内スペースが割かれることは、あり得ません。(屋外はあり得ます。) 

避難者の受け入れ拒否についてはこちらの記事をどうぞ。

taifufu 令和2年台風10号では79の自治体で避難所の受け入れ拒否(たらい回し)が発生。この問題について内閣府から9月23日付で通知(見解)が出ているので、防災士が解説します。

熊本地震避難者に対するペット避難に関するアンケート

kumamoto

kumamotojisin2

ペット専用の場所の確保に関する課題 (アンケート抜粋)
ペット同伴のスペースを設置してその場所を貼り出していたが徹底されず、一般のスペースにペットを同伴して就寝している避難所があった。

 

特に、ペットを連れた飼い主が、乳幼児が避難していても平気で散歩していたり排泄物を放置したりするマナー違反も散見されてストレスを感じたという声や、アレルギーを持つ方とトラブルになった事例の報告もある。

 

避難所によっては、ペット同伴避難者は専用の教室を利用させるなどして居住スペースを分けていた事例もあるが、居住空間が一般の避難者と比較して優遇されていたことにより肩身が狭く、他の人たちに気を遣っている様子が見受けられた。

しば

意外と好意的な意見も多かったというのが、「しば」の印象です。

 

熊本地震では、私もボランティアで、避難所に行ったりもしましたが、熊本市内の訪問した避難所では、比較的避難スペース余裕があり、犬が渡り廊下で紐につながれていたことを覚えています。

 

ちなみに、このアンケートは、800 サンプル(避難所または福祉避難所利用者 200 サンプル、車中泊 600 サンプル)で、実施時期が平成 29 年1月 11 日~14 日となっています。

アンケート結果としては、被災がひと段落した、心理状況下で、かつ、ペットと物理的に距離を置いて生活していた方を中心とした意見として受け止める必要があります。(実際には、ペットに対して厳しい意見を持っている人が、アンケート結果よりも多いんじゃないかと思います。)

アンケートの詳細を知りたい方はこちらからどうぞ

(内閣府)平成 28 年度避難所における被災者支援に関する事例等報告書

ペットの避難に対する自治体の考え方

避難所を、どういう方針で運営するのかについては、国や都道府県ではなく、市町村が地元の自主防災組織と連携しながら決めていく形になります。

実際に、ペットの同行避難について多くの市町村は避難所運営マニュアルの中で、数行を割いているのみです。積極的にペット同行避難の受け入れを打ち出している先進的な自治体では、個別に「ペット同行避難マニュアル」を策定し、飼い主の責務、避難所の受け入れ体制等を整備しています。

飼い主に対して何を求め、ペットの同行避難をどのように位置づけし、その準備をしているのか、「ペット用の何らかの備蓄はあるのか?」 「専用スペースはあるのか(特に風水害の場合、屋内を許可しているのか)?」 「避難してきたペットの世話に自治体は人を割くのか?」この3つの観点から、チェックしたので、代表的な2例を報告します。

 

”しば”

 

東京都 渋谷区 ペットとの同行避難マニュアル(平成30年4月策定)

ペット用の何らかの備蓄はあるのか?

(区は)ケージと屋外テントを備蓄。ペットフードについては備蓄を推進していく。

(飼い主は)フード、水(少なくとも5日分〔できれば7日以上が望ましい〕)及びその他のペット用品を備蓄する。

 

ペットの飼育管理に必要なペット用品やペットフード等は、飼い主がそれぞれ避難所に持ち寄ることが原則です。しかしながら、ペットフード等を持ち出すいとまがなかった飼育者の発生などの事態に対応するため、各避難所の備蓄倉庫、区の備蓄倉庫にペットの救護に必要な物資を備蓄します。

専用スペースはあるのか(特に風水害の場合、屋内を許可しているのか)?

避難所運営委員会や施設管理者は、避難所における利用可能な施設や形態、ペット同行避難者及びペットの数、季節・気候等を考慮して、避難所及び避
難所敷地内におけるペットの飼育スペースや飼育方法を決定しておくことが必要です。

 

人とペットの居住場所を区別する方法としては、「避難所内の一角をペット飼育用スペースとする方法」や「避難所敷地内に大型テント等を設置してペッ
ト飼育用スペースとする方法」等があります。

sibuyainuneko

避難してきたペットの世話に自治体は人を割くのか?

避難所にペットと同行避難している飼い主全員で「飼い主の会(仮称)」を立ち上げ、飼い主の中から飼育リーダーを指定します。
「飼い主の会(仮称)」は、リーダーを中心として、飼い主全員が協力し、ペットの飼育管理を行います。

渋谷区の詳細マニュアルはこちらかどうぞ

 

埼玉県 さいたま市 避難所におけるペット対応マニュアル(令和2年8月改定)

ペット用の何らかの備蓄はあるのか?

なお、フード、水やケージ、リード、その他の用具などペットの飼養に必要な資材等は、原則として飼い主が各自で持参します。災害発生から数日以降は、順次届く動物用の救援物資を活用します。

専用スペースはあるのか(特に風水害の場合、屋内を許可しているのか)?

避難した動物の取り扱いについて、指定避難所では様々な価値観を持つ人が共同生活を営むことに鑑み、居室への動物の持ち込みは原則禁止とし、敷地内の屋外に飼養専用スペースを設置し飼養させることとする。ただし、施設に別棟の倉庫等があるなど収容能力に余裕がある場合には、当該指定避難所に生活する避難者の同意のもとに、居室以外の部屋に専用スペースを設け飼養させることができる。

災害発生時に混乱が生じないよう、避難所運営委員会において以下の内容を参考に、ペット飼養スペースや飼養ルールをあらかじめ検討しましょう。

 

saitama inu neko

避難してきたペットの世話に自治体は人を割くのか?

動物への給餌、排泄物の清掃等の飼養・管理は、当該動物の飼い主が全責任を負うものとする。また、居室以外の専用スペースで飼養した場合、撤去後に当該動物の飼い主が施設を現状復旧させる全責任を負うものとする。

 

さいたま市の詳細マニュアルはこちらからどうぞ

[say name="しば" img="https://sibainu1116.com/wp-content/uploads/2020/04/-e1587856879493.png"]

2市区とも、似通った結果になっており、飼育場所は避難所運営委員会で決める(事前に決まっていない可能性大)、備蓄や基本飼い主にお任せです(渋谷区は、一応ケージの備蓄がある)。備蓄の充実と飼育場所の確定はネックで、その他の自治体のマニュアルも見ましたが、決まっていないケースしか見つけることができませんでした。

簡単にいうと、自治体、避難所、飼い主の責任の分担は済んだけど、その他は決まっていないといった感じです。

 

なぜ、ペットの同行避難対策が進まないのか?

理由1 国による財政的な支援がない

ちなみに、新型コロナウイルス感染症に関する消毒液やパーティション、段ボールベット等の配備に対しては、『新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金』により100%国から財政支援されます。

当たり前ですが、財源措置されている取り組みを進めなければ、住民や地方議会から指摘を受けることなるので、市町村ではこれらの資材・用品の配備が急ピッチで進んでいます。

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 一部抜粋

近年頻発、激甚化する自然災害等に備えるため、地域で組織されている自主防災組織の活動費等の一部を支援。

 

また、地方公共団体が、避難所の衛生環境を保つため、消毒薬等の資材を避難所に備蓄するための経費に充当。

 

詳細はこちらの 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 活用事例集 P31を参照

避難者全員を受け入れる十分な避難スペースがない

市町村は、災害対策基本法に基づき、災害が発生した場合に住民を受け入れる避難所を事前に指定する義務があります。

その法律の下、市町村は、想定されうる最大規模の地震が発生した場合、何人の避難者が発生するかを逆算して、開設する避難所の個所数や受け入れ可能人数を算定しています。

一方で、令和2年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、避難者を受け入れることが自治体の責務として、国のガイドラインなどで示されることになりました(法的な責務ではない)。

先ほどのコメントと重複しますが、避難者を受け入れるキャパは、これまでと比較して、1/2~1/3程度になると試算している自治体が多いようです。こうなってくると人間のスペース確保が最優先であり、ペットのスペースを考慮できるような余力のある自治体はありません。

 

しば

ここまで、ペットの避難を取り巻く状況を解説してきましたが、ペットの同行避難を取り巻く環境は厳しいと言わざるを得ません。

 

あなたは、食料も水などの物資が不十分な避難所で、ペットに、避難者と同じように、水や食料が割り当てられると思いますか?答えはNOです。

 

仮にペットの飼い主が、自分とペットの水を確保して、避難所に避難できたとしても、水が手に入らない状況下では自分のペットに与えることは、難しいでしょう。(他の避難者の視線を無視して、ペットに水を与えることはできますか?)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です