自治会加入率が年々減少している中で、地域に丸投げされた高齢者や障害者の避難支援が今以上に充実することはあり得ません。

車いす

障害者や高齢者の避難支援って誰がするの?

皆さんは避難所まで、自力での移動が可能ですか?災害時に最適な避難行動をとることが、私たち住民一人一人に求められていますが、自力で避難所まで避難できない人はどうすればいいのでしょう?市町村が避難のお手伝いをしてくれるのでしょうか?

国のガイドライン(避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針 平成25年8月)に、それぞれの関係機関の役割が整理されているので見てみたいと思います。避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針(リンク)

市町村などの基礎自治体の役割

避難行動要支援者名簿の作成

市町村は、その福祉施策の中で、身体障害者手帳の取得者名簿、介護保険法の要介護度認定者名簿を有しています。

国のガイドラインでは、これらの名簿を活用して、災害時に避難支援が必要であると思われる重度障害者や要介護度の高い高齢者のリスト(避難行動要支援者名簿という)を作成することを求めています。

作成した名簿を関係機関と共有(同意者のみ)

その後自治体は、名簿に掲載された対象者に避難支援関係者(警察・消防・自主防災組織など)への個人情報提供の可否について同意を取ります。

提供を同意した人については、上記の避難支援関係者の間で情報が共有し、災害時の避難行動支援に活用する事になっています。

※要するに、自治体は、直接的な避難支援は行いません。

地域(民生委員、コミュニティ、自治会)の役割

名簿に掲載された避難行動要支援者の避難支援

名簿の提供を受けた避難支援関係者(民生委員、コミュニティ、自治会)は、避難行動要支援者の避難支援に取り組むことになるのですが、もれなく守秘義務が付いてきます。

国のガイドラインでは、アクセルとブレーキを同時に踏むような表現が並んでおり以下のように示されています。

P28 名簿情報の提供を受けた者に係る守秘義務の考え方

名簿情報の提供を受けた者が、災害発生時に、避難行動要支援者の避難支援等に必要な応援を得るため緊急に名簿情報を近隣住
民等に知らせるような場合は、「正当な理由」に該当すると考えられるため、改正災対法における守秘義務違反には当たらない。

なお、避難支援等の応援を得ることを目的とした場合であっても、災害が現に発生していない平常時から他者に名簿情報を提供
することは、「正当な理由」に該当しない。

P35 具体的な支援方法に関する調整

市町村やコーディネーターとなる民生委員や社会福祉協議会、自主防災組織・自治会、福祉事業者等を中心に、避難行動要支援者を
個別に訪問し、本人と具体的な避難支援等の方法について打合せ、市町村や避難支援等関係者間で避難支援等に必要な情報を共有でき
るよう、避難行動要支援者名簿に記載されている情報に加え、下記の情報等を記録すること。

矛盾している表現で、面食らうと思うのですが、例えば、自治会長が避難行動要支援者名簿を受け取った場合、個人情報保護の観点から自治会員にその名簿情報を配布して共有するのはNG(守秘義務違反)になります。

しかしながら、自治会長が名簿に記載されている方の自宅に訪問し合意を得たうえで、自治会員の中から避難支援者を決定し、その人に情報提供するのはOKという事になっています。

私の住んでいる地域の自治会は、100世帯位ですが、地域によっては800世帯位の自治会もありますし、20世帯位の自治会もあります。

避難行動要支援者の個人情報は非常にセンシティブな情報であることは理解します。

しかしながら、末端の避難支援者まで情報を共有するためのステップが多すぎるます。また、避難行動要支援者宅を訪問をしないで、どの程度、個人情報を共有していいのかについては、国からは見解は示されていません。

仮に800世帯の自治会の場合、会長1人で、避難行動要支援者の自宅を一つ一つ訪問して、支援者のマッチングまで行う・・・。これは無理があり過ぎます。

避難支援体制の現状について

このような状況の中で、自治体によっては、避難行動要支援者と支援者を1対1の関係まで整理できるよう仕組みを作っている自治体と自治会長までの名簿配布に留めている自治体の2通りがあります。

理想だけを追えば、1対1の関係まで整理できればよいのですが、この個人情報保護の足かせが重すぎること、避難行動要支援者の数が多すぎる事から、自治会長やコミュニティの代表者1人で名簿を抱えているだけで、そこまで至っていないのが現実です。

特に、コミュニティの力が落ちている都市部の自治体では、自治会などの組織の代表者が名簿を所有する事をゴールに設定していることが多いようです。

なお、1対1の関係整備に取り組んでいる整理している自治体であっても、すべての避難行動要支援者に対して支援者が紐づいているわけではなく、一部の人だけ支援者が見つかっているという状況が殆どです。

日本という単位でみた場合、関係機関への名簿の提供は完了しているものの、実際の避難行動支援については、ほとんど進んでいないのが実情ではないでしょうか?

以下の総務省の公表しているデータがありますが、東京23区だと、避難行動要支援者全員分の避難支援計画が策定できている区は1つもありません。(全国平均12%とのことです。ただ、私個人としては、その計画にどれくらいの実効性があるのかは、かなり疑問が残ります。策定するだけなら何とでもなるので。そういう意味では東京23区は正直なだけかもしれません。)

令和元年 避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果等(総務省)リンク

詳細データ 令和元年 避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果等(総務省)リンク

 

行政が、個々の住民の避難支援を担えないという状況は理解します。一方で、少子高齢化の進行、単身世帯の増化に伴って、自治会の加入率は年々減少し続けています。

大きな時代の流れと逆行した理想を国が地域に押しつけても、それが実現する事はないでしょう。

これからも、地域のつながりはますます弱まっていきます。地域に丸投げされた高齢者や障害者といった避難支援の体制が、今以上に充実することはありません。

しば

一つのアイディアとして、地域が動きやすくする施策の展開が挙げられます、今のままでは地域にとってハードルが高すぎるのです。例えば、地域の手に負えない寝たきりの障害者は、行政が避難支援を担う仕組みの新設や、個人情報の足かせを軽くする事などが考えられます。

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