防災無線がうるさい??騒音規制の対象になるのか、訴訟して勝てるのか解説します

防災行政無線

みなさんのご近所には防災無線はありますか?正式には防災行政無線と呼ばれるものです。

ちなみに私の自宅の近くにも、防災無線が設置されていて、定時放送時には結構な音量で放送が流れています。

結構な音量なので、夜勤などで眠っている人にうるさい迷惑な施設なのかもしれません。

実際に全国各地で、防災無線の音量をめぐって住民と行政との間でトラブルになっているケースがチラホラあります。

中には、訴訟までいったケースもありますが、住民側が勝訴する事はかなり厳しいようです(過去の訴訟では、行政側の完全勝訴)。

防災無線は、災害時に避難情報などを伝達するいわば命を守るための施設であり、「聞こえないと困る」という住民の権利が重視された判決結果だと思います(行政勝訴の前例ができたことで、今後もこの考え方は踏襲されていくことと思います)。

令和3年3月現在、防災無線は、騒音規制法などの法令の規制対象にはなりません。今回は、迷惑施設の側面を持つ防災無線がなぜ規制されないのか?法的な観点から書きたいと思います。

MEMO
防災無線の音量規制については、法令の規制対象にはならない。訴訟についても行政側が勝訴。

防災行政無線

防災無線(正式名称:防災行政無線)とは何か

防災行政無線をご存じですか?小学校や公民館、場合によっては公園に設置されている屋外放送用装置(ラッパ)とそれに付随する機器の事をさします。

私の住んでいる自治体では、5時に夕焼け小焼けの定時放送があります。最近だと、コロナウイルス感染症に関する自粛関係の放送が毎日流れています。(緊急事態宣言は解除されたものの、宴会等の自粛の放送は続いているようです。令和3年3月現在。)

ごくまれにですが、災害時にも流れているようですが、特に大雨の時には、雨音と屋内を締め切っていることもあり、全く何を言っているのか聞こえません。

防災行政無線の構成

 

無線2

(神戸市防災行政無線ハンドブックより引用)

要するに、神戸市の場合、屋外スピーカーと個別受信機である専用個別受信機(ラジオ型受信機)の両方が鳴るという事です。

このラジオ型受信機ですが、都市部では、各世帯に配布されている事例はほとんどありません。一方、田舎では結構配られているケースがあるようです。

理由は様々ですが、人口密度が低く、自治体の面積が広い市町村だと、屋外スピーカーだけですべてのエリアをカバーするのは難しく、各世帯にラジオ型の受信機を配ったほうが、費用対効果が高いという判断だと思われます。

たしか、映画「君の名は」にもラジオ型の受信機が出てきたかなと思いますが、一種のコミュニティFMみたいな使い方をされているようです。

定時放送以外はどんな時に鳴るのか?

細かい所は自治体によって異なります。ただ、防災行政無線の存在理由は、定時放送を流すことではなく、住民の生命を守るため緊急放送を流すことにあります。

ほとんどの自治体が次の状況での放送を想定しています。

基本的な放送基準
  • 住民に避難を呼びかけるとき(洪水、土砂崩れ、津波)
  • ミサイルや大規模テロで住民に避難を呼びかけるとき
  • 緊急地震速報
  • その他
台風

しば

※夕焼け小焼けの放送は、実は機器に故障がないかを確認する保守点検の一環として実施されています。

先ほど述べた、放送基準以外については、むやみに放送しないよう制限をかけている(自主規制)自治体が多いですが、色々な場合に対応できるよう、放送の内容やその長さは、発信主体である国や自治体の裁量で自由に決られるよう、融通を持たせているケースが大多数です。

例えば、行方不明者の捜索などの情報は、防災行政無線で流すことが多いようです。詳細は、各自治体ごとに「防災行政無線局管理運用規程や要綱 」を定めているので確認が可能です。ちなみに厚木市の場合は以下の通り。

厚木市防災行政無線局運用要綱

固定系を使用して放送することができる事項は、次のとおりとする 。

(1) 地震、台風、洪水等の災害に関すること。

(2) 公害についての注意報及び警報に関すること。

(3) 市政の重要なお知らせで急を要するものに関すること。

(4) その他市民生活に係わる重要なお知らせ等市長が特に必要と認める事項に関すること 。

防災行政無線にはどんな課題・問題点があるのか(弱点)

このように防災行政無線は、災害時や緊急時の情報伝達のツールですが、ツールとしては非常に課題が多いものとなっています。

防災行政無線の課題・問題点
・聞こえるエリアに限界がある(機材の種類によるが300m~500m)

・当たり前だが、ラッパが向いていない方向には聞こえにくい

・都会部では、音が高層の建物にぶつかって明瞭に聞こえない

・たくさん建てれば、それだけ聞こえるようになるが、同時に音同士が干渉しあって(ハウリングして)逆に聞き取りきくくなる

とこのようにたくさん課題があります。当然ながら国や自治体は防災行政無線以外にも様々な、情報伝達手段を用いて、情報発信をしています。(ホームページやSNSやエリアメール・緊急速報メール)

その情報発信手段のどれもが、欠点を有しているため同じ内容を様々なツールで伝達するという手段をとっています。

今後、スマホの普及率がさらに上がれば、防災行政無線はその役割を終えることなると思われます

今はその過渡期であると捉えることができます。

国や自治体が、今こぞってスマホアプリやLINEによる情報発信手段の多重化に取り組んでいますが、これは防災行政無線がなくなる将来を見越しての先行投資であるともいえます。

しば

スマホの普及率が高まり、行政が緊急情報を確実に伝達できる環境が整えば防災行政無線は、無用の産物になる。

総務省の情報通信白書(令和2年)によると、モバイル端末の所有率(96.1%)のうちスマートフォンは(83.4%)。

参考:総務省 令和2年 情報通信白書のポイント (外部リンク)

防災無線は、騒音規制の対象になるのか

騒音規制法及び大阪府生活環境の保全等に関する条例施で規制されるか?

結論:規制対象になりません。

防災行政無線は、法律や条例で規制される対象には入っていません。騒音規制法とその関係条例でどのように規定されているかを解説します。(条例は例示として大阪府の条例で解説します。)

騒音規制法 第1条より
この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
条例(大阪府生活環境の保全等に関する条例施行規則)第68条
(拡声機の使用の特例)次に掲げる場合とする。
一 災害時における広報宣伝その他公共のために拡声機を使用する場合
二 公職選挙法に基づく選挙運動のために拡声機を使用する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、一時的に拡声機を使用する場合であって周辺の生活環境を著しく損なうおそれがないとき

簡単にまとめると、法律では防災行政無線を騒音の対象とはせず、条例では防災行政無線を騒音の例外規定として定めています。

なので、防災行政無線が法的に制限されることはあり得ません。

騒音

環境権や健康権といった新しい人権に基づく差し止め訴訟を起こした場合(勝てるか)

結論:敗訴しています。

防災行政無線については、音を出す施設であることから、住民とのトラブルに発展するケースが全国で多々あります。

上記で述べたように、騒音規制法の視点で住民と係争関係になることはありませんが、「社会生活を送る上で受忍すべき限度を超えているか否か」で裁判で争われたケースがあります。

結果は、原告敗訴です(控訴は棄却)。

訴訟しても勝てません。

この裁判の判決が、前例として今後の裁判の基準となってくるため、住民が訴訟を起こして勝訴する可能性は非常に低いでしょう。

一応、リンクを張っておきます。

防災無線差し止め訴訟  名古屋地方裁判所 判決文 (外部リンク)

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